前には中国の研究グループの成果として高自然放射線地域でがん増加が見られないこと、これの40〜70歳の白血病を除くがん死亡率は高自然放射線地域のほうが有意に低い、と述べました。しかし、これはこの研究で1番注目されるところですから慎重にやらねばなりません。そこで私達は3つのことをしました。1つはがんの診断の確認をしっかりやるとともに、その根拠を調べ信頼性のレベルを明らかにすることです。今まで1枚の死亡届けによっていたのを、その死亡届をもとに専門の医師のグループが患者の掛かった病院や医師を尋ねその患者の病気についての詳細な調査を行い、それを定期的に委員会で検討して最終的にがんかどうかを確定するという手順をとりました。その為の調査用紙は数枚に及びました。次は高自然放射線群とコントロール群とを単に比較したのでは必ずしもその違いが放射線によるとは言えないので、高自然放射線群をさらに3分し、線量の増加とがん死亡率との関係の有無を調べることにしました。最後は追跡する集団を1987年1月1日現在の住民に固定し、それをコホートとして追跡調査することにしました。こうして作られた4つの線量群の線量(外部線量)とその人数を表2に示します。