9,患者の放射線被ばく


  患者への放射線医療利用に対する適用には別のガイダンスが必要である。患者個人への線量に制限を設けることは、患者の診断、治療の効果を減少させるような場合、利益よりも害が多くなる。これは医療手順の正当化に重点が置かれている。

 医療手順の正当化には、3つのレベルがある。第1の、最も一般的なレベルとして、害よりも利益の方が大きい限り医療での放射線使用は容認される。その正当性は、現在当然のこととして受け入れられている。第2のレベルとしては、特定の目的のためには特定の手順が定義され、正当化される。たとえば、患者の胸部レントゲン撮影で症状を見る場合などである。このような総括的正当化の目的は、放射線使用手順が通常は診断や治療を改善することになるか、被ばくした個人に関する必要な情報を提供することになるか、を判断することである。第3のレベルでは、患者個人への手順の適用を正当化しなければならない。すなわち、具体的な適用は患者個人にとって害よりも利益になる方が大きいと判断できるものでなければならない。

 以下の公式な最適化では、患者への線量を医療目的に合わせてできるだけ低くする必要性を中心に扱っている。これは診断において不必要な被ばくを減らすことを意味している。一方、治療においては、健康な組織の被ばくを回避しながら治療に必要な放射線量を使用しなければならない。

定義づけされた医療手順の総括的正当化
 
手順の総括的正当化は、時には各国の規制当局と協力しながら各国の専門機関が行うべき仕事である。医療手順の全体的な便益としては、患者本人の死を避けられるという直接の便益ばかりでなく、患者の家族、ひいては社会への便益が含まれている。医療における主な被ばくは患者に対するものではあるが、医療スタッフや医療手順には直接関係のない公衆への被ばくも考慮すべきである。偶発的な被ばく、意図されない被ばく(潜在被ばく)の可能性を考慮しなければならない。既存手順のリスクと有効性に関する情報、新しい手順に関する情報が増加してくるに従って、決定内容はその都度見直しする必要がある。

個人患者に対する手順の正当化
 複雑な診断手順のためや治療目的のためには、総括的な正当化は不十分かもしれない。放射線専門家や担当医による個別の正当化が重要であり、入手可能なあらゆる情報を考慮しなければならない。これに含まれるものは、候補となる手順や代替手順の詳細、患者個人の特徴、患者への予定線量、検査や治療に関する過去情報と期待情報の有無などである。

診断リファレンスレベル
 指定された手順による患者への線量は、通常の状態ではその手順のリファレンスレベル(X線検査の入力線量などの測定可能な数値で表示される)を超えてはならないということを示すために、医療診断において診断リファレンスレベルが使用される。これらは既にIAEAの基本安全基準、医療被ばくにおける電離放射線から健康を守るための欧州原子力委員会指示文書(Euratom Directive)に記載された医療診断手順のガイダンス・レベルとして使用されている。

    

ホームページに関するご意見・ご感想をこちらまでお寄せ下さい。
メールアドレス:rah@iips.co.jp