8,自然線源


 ICRPは、自然界の放射線源からの防護についても明確な勧告を作成していくつもりである。被ばくが防護システムの対象に入るのか除外されるのかを決めるものは、被ばくが制御可能かどうかにかかっている。この点は明白である。特に触れておきたいことだが、ラドンは地球上あらゆるところに存在するため、ラドン-222の制御は特別のケースである。

 Publication 65(ICRP 1994)に掲載されているラドン‐222に対するICRP勧告は広く受け入れられており、ICRPとしてもその継続を希望している。この勧告の内容は、放射能濃度で表示される最大レベルの線量(拘束値)を示唆していた。さらに放射能濃度範囲であり、最適化された「対策レベル」はこの放射能HJ濃度範囲内に見つかるだろう。現状では、このレベル以上の被ばくについては防護システムを適用することを勧告する。また、設定レベル以下の被ばくについては防護システムの適用除外となる。ICRPはこの設定レベルを「除外レベル」と呼んでいる。

 ICRPは、その他の制御可能な自然線源からの防護についても、ラドン‐222からの防護と同じアプローチを検討中である。環境物質における内部被ばく、外部被ばくの主要線源は、カリウム‐40、及びウラン‐238、トリウム‐232の壊変系列である。ICRPは、すべての自然線源を制御することは現実的でないとの理由から、これらの物質には最大拘束値を勧告することを考慮中である。この拘束値はラドンの場合と同様、放射線量単位の表示ではなく放射線濃度で表示されることになろう。理由はその方が適切であり、現実の自然界での範囲の上限値となるからである。拘束値よりも低い「除外レベル」を見つけるために、担当当局は総括的最適化、すなわち実践可能性に基づいた幅広い経験を適用するだろう。

 唯一の防護対策は公衆を移動させることであるが、もし線源が主として建築材料であったとすれば建物の大幅な再建築しかない。このような対策は極めて影響度が大きく、大変な費用・資源が必要になる。このように除外レベルは拘束値より低く、恐らく何分の一以下だろうが、自然界に存在する範囲内のどこかに入り、年間1ミリシーベルトの少数以下の線量に相当するものである。

 地上での宇宙線による被ばくは制御不可能である。したがって勧告の範囲からは除外されている。航空機内で受ける宇宙線被ばくを制御する唯一の対策は、旅客及び乗務員の高度飛行中の滞在時間を制限することである。航空機乗務員にとっての平均年間実効線量は3 mSv程度であるが、その職種によってはこの2倍くらいになることもあろう。ICRPは、ジェット機運行に携わる航空会社の乗務員の被ばくは、防護システムの職業被ばくとして取り扱うべきだとPublication 60(ICRP 1991)の中で勧告している。ICRPは公衆が飛行中に受ける線量の制御は正当化できないので、この場合の被ばくは除外すべきであると考えている。

    

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