動物実験データ
P. Duportは85,000匹の照射群と45,000匹のコントロール群のそれぞれ60,000個と12,000個のがんについて検討を行っている。この研究の結果は2001年7月には明らかにされるだろう。
数多くの動物実験データからの結論は
- 線量が同じなら線量率が低い方が効果は小さい。このことは高LETでもあてはまる。これはLNTに反する。
α線より、中性子の均一の照射の方が効果は大きい。
- 30-40%のデータで0.5Gy以下ではむしろ線量と逆の相関が見られ、コントロールより効果は小さくなっている。これはLNTに反する。
- 多くのデータでU字型の線量-作用曲線が描かれていることから、適応応答(ホルミシス)の考え方は否定はされないだろうが、このタイプの応答が見られる実験の蓄積が必要だ。
- 線量率とLETで分けてデータを解析するべきだ。
疫学データ
原爆生存者と放射線従事者のデータがある。
3つの解かなければならない問題がある。
- がん発生に結びつく最低線量
大人では200mGy。これは動物のデータとも一致する。
中国の技師のデータでは500mGyでは白血病とがんが増加し、100mGyで は増加していない。100,000人を対象としたIARCの調査では400mSv以上ではわずかな白血病の増加がみられた。
子供では100mSvで甲状腺と乳がんが増加する。チェルノブイリの事故後、子供の間で1,800の甲状腺がんが発生したが、青年ではほとんどみられなかった。
少女の乳がんは70-100mSvで発生の増加がみられる。しかし大人ではかなり高線量でも乳がんは稀だ。
これらの2つの例から増殖の早さが重要とわかる。
- 線量-作用相関
原爆生存者の固形がんにおいてのみ直線的相関がみられる。しかし、以下の但し書き付きだ。
- 0.2-2Svにおいてのみ。
- ここで問題にされている腫瘍は年齢も組織学的所見もまちまちである。したがって、この相関を低線量におけるリスクの推測における何らかの生物学的根拠とすることはできない。しかし、がんのタイプを考慮した場合LNTを排除する事はできないし、いくつかのデータは例数が少ないために統計的有意差は得られていないがLNTを支持してもいる。
また一方で、統計的にLNTに会わないいくつかのデータもある。
- 原爆生存者の白血病
- 放射性ヨウ素の処置を受けた患者の白血病 増加なし。
- Co60汚染で10年間にわたって0.3Sv被爆した10,000人の住人の間でがんの増加はない。
- 乳ガンの放射線治療を受けた患者の固形がん。この場合は2次関数的。
中国やインドの高バックグラウンドの住人のコホート調査ではがんの増加はみられない。
- LNTの悪影響
精神的な影響はここでは議論しないが、社会的な出費についてのべる。チェルノブイリの後、たかだか数mSv/年の被爆を逃れるために220,000人が避難した。どんな線量でも危険であるとするLNTの主張はこのような悪影響を生じる。
結論
LNTの仮定は基礎実験データとも疫学データとも一致しない。LNTを低線量もしくは低線量率でのリスクを正しく予測するために用いることはできない。0.5Gyを数ミリ秒で照射した場合のがん発生リスクを、それより3万分の一の線量を一年間にうける場合のリスクの計算に使うわけにはいかない。100から10mSv/年の線量では直線的な外挿はリスクの限界を設定するのには良い。しかし10から1mSv/年の範囲(自然放射線の範囲)では注意が必要だ。1(または0.3)mSv/年以下の線量ではリスクを考える必要はない。
ホームページに関するご意見・ご感想をこちらまでお寄せ下さい。
メールアドレス:rah@iips.co.jp
|