はじめに

 最近のUNSCEAR報告書は発がんの危険性(リスク)における「しきい値なし直線的相関」(LNT)の有効性についての議論を再燃させている。

 LNTは受けた線量や線量率に関わらず、リスクを全ての放射線被曝の総和として推測するという容易さのせいで、1960年代に放射線防護における行政的な簡略化のために導入された。1965年にICRPは「しきい値線量の存在が明らかでない以上、どんなに低線量でもその線量に比例した発がんリスクはある」とした。この委員会はLNTの考え方が必ずしも正しいとは限らないとは認めながらも、リスクの過小評価よりはよいとした。

 1970年代の終わりに見いだされたがん遺伝子の存在は、この仮説の科学的基盤を与えるものとして利用され、放射線防護においてLNTは定説となった。しかしながら、その有効性は放射線生物学者によって議論されてきた。この論文ではそれらを検討する。

 

LNTに賛成する意見

  1. 理解しやすい単純なモデルである。その基礎となる仮定は
  • すべてのDNA傷害は同じ確率で変異、そして発がんへと結びつく
  • 遺伝子の傷害の数とがんの数には直線的な相関がある
    低線量のリスクを過大評価していることはICRP自体にも明らかで、低線量(<200mSv)や低線量率での作用の低さを考慮するために線量-線量率有効性因子(DDREF)を導入した
  1. 原爆生存者の固形がんの発生は200mSv以下での影響は疑わしいが、200mSvから2Svの間では直線的に増加している
  1. 放射線防護の観点からは、LNTは間違っても大事には至らないという利点があり、リスクの上限を設定できる

 

LNT に対して反対の意見

データの分類は以下の3種類である

  1. 基礎研究データ
  2. 動物実験データ
  3. 疫学データ
    

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