本総説は、本邦で実施している三朝ラドン温泉の適応症に関する機構解明に資するために調査した欧州におけるラドン療法の医学的研究に関する最近の動向の概要についてまとめたものである。すなわち、ラドンを用いた温泉や坑道での療法の適応症には、脊椎の非細菌性炎症(ベヒテレフ病)、慢性多発性関節炎、気管支喘息などが含まれる。臨床医学的研究として、以前、客観的方法で検討されたものはほとんどなかったが、最近、無作為化二重盲検臨床試験などにより、ラドン療法がベヒテレフ病、慢性多発性関節炎などの患者の痛みを緩和される効能があることが実証されつつある。また、基礎医学的研究として、抗酸化機能や免疫機能などの指標に着目した動物実験により、ラドン療法の機構を解明する上で合理的根拠が得られつつあることもわかった。さらに、これらの知見と本邦での研究動向を踏まえ、今後、期待されるラドン療法の機構解明を行うための研究課題を提案した。
キーワード:ラドン療法、適応症、活性酸素、二重盲検試験、バードガスタイン