チェルノブイリ事故により今日までに子供の約2,000の甲状腺がんが報告されている。これはヨウ素-131と短寿命のヨウ素同位体によるものである。甲状腺に対する照射量は平均で1Gy、最も被ばくした地域においては平均3Gyになる。したがって、このがんの発生という影響は我々の持っている従来の放射線リスクの知見に沿っている。
電離放射線の生物影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)は、2000年にチェルノブイリ周辺の住民に甲状腺がん以外のがんや白血病の過剰発生はないと結論した。また、この集団において被ばくと先天的奇形の相関も見られなかった。この結論は2001年に国連人道問題調整官事務所(OCHA)によって疑問視されたが、このOCHAの報告書はUNSCEAR(これは医学的・科学的にこの問題について国際連合(国連)や世界保健機構(WHO)との名前で発言することが可能な唯一の組織だが)によって反駁された。会議が2001年6月にキエフで開かれ、WHO,
OCHA, UNSCEAR, 国際放射線防護委員会(ICRP)そして国際原子力機関(IAEA)が参集した。会議の結論は公表され、その中で健康状態は、特にベラルーシでは保健ならびに社会的状況の劣悪化により確かに大変なものだが、UNSCEARの結論と矛盾するものではないとされた。この健康状態の劣化は、おそらく移転させられた人々の生活条件の悪さと心理社会学的な要因によるものだろう。様々な疑問が提起されたが、それらは人々の健康状態を変化させるような複合的な因子で成り立っているこの(事故後の)状況の疫学調査が必要であることを示している。これがキエフ会議の採択した勧告である。
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