細胞周期のコントロール

 細胞周期の進行には様々な制御が働いている。高線量では放射線はこの周期の進行をG1期での停止、S期の遅延、G2期での停止などによって妨害する。G2期での停止がよく研究されており[6]、図5には全身照射後の胸腺細胞のG2期での停止の線量-作用の関係が示されている。1Gy以上の全身照射後24時間ではG2/M期の細胞の割合が顕著に増加しているが、低線量ではむしろコントロールよりも減少している[7]。G2期からM期への移行はMPF(M期促進因子)が制御している。MPFは2つのサブユニット,サイクリンB1とp34cdc2、で構成されており[6]、これらのmRNAとタンパクの発現を定量した結果、2Gyでこれらは抑制され、0.075Gyでわずかに増加することが明らかになった[3]。これらのデータは全身照射によってもたらされる細胞での変動の分子レベルの根拠となる。

 

図5 X線全身照射後の胸腺におけるG2期細胞の数の変動

    

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