被ばくを引き起こす可能性のある新しい線源導入対する責任は分散されており、責任は主として社会全体のものでなければならないにも拘わらず、実際は関連当局によって施行されているという点はICRPも現在よく認識している。このためには、対象となる線源から全体的に正味の便益が得られることを保証する「正当化」の原則の適用が必要になる。意思決定は、経済的、戦略的、医学的、国防的、科学的配慮に基づいて行われる。放射線防護の面からのインプットは、現在もあるにはあるが、必ずしも意思決定の影響要因とはなっておらず、場合によっては小さな役割しか果たしていない。ICRPでは、行為が正当化されたと宣言された場合のみ防護システムを行為に適用すること、また、制御可能な自然放射線源のみに防護システムを適用することを意図している。
患者の診断被ばくの正当化も含まれているが、勧告では別途取り扱うようになっている。理由は、意思決定にニ段階あるからである。まず、第一に、医学用途の総括的手順の正当化が必要である。第二に、担当医は、個々の患者の被ばく状況をその患者への便益に照らして正当化しなければならない。それに続いて、患者の防護を最適化する必要があり、ICRPはよき実践例の証左としての診断参照レベルを支持してきた。(第9節を参照)
ICRPの開発されている防護システムの原則はPublication 60の原則の進化したものであり、さらに明確化したものである。線源が関連当局によって正当化される場合、放射線の原則は、次のように表現される:
各々の線源に対して、防護の基本的な基準は最も多く被ばくした個人に適用される。これは社会を防護することにもなる。これがすなわち「拘束値」である。
個人が線源から十分に防護されれば、社会もその線源から防護されることになる。
しかしながら、さらに高度な防護が実行可能である場合にはその防護を達成するために線量を減少させるさらなる義務がある。これが認可レベル、すなわち「最適化」となる。
個人やグループを防護するこのシステムは、従来のものよりも更に一貫性のある防護の基盤を提供することを目標にしている。各々の関係ある線源からの防護に必要な基本的な基準は、定量的な数値(通常は線量であるが放射能濃度でもよい)として拘束値を設定することによって、個人のために達成される。拘束値は通常は年間値であるが、状況によっては単一値でもかまわない場合もある。
このような拘束値、すなわち防護の基本レベルはICRPが提案することができ、国際的に承認されうる。最適化の責任は施設運営者と政府担当機関にある。施設運営者の責任は日常の最適化であり、ライセンスされている運営の認定レベルを確立する最適化に必要な情報を提供することである。これらのレベルは、必然的に施設あるいは設備に依存し、ICRPの範囲を超えるものである。