平成11年9月30日、株式会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所のウラン加工工場で発生した臨界事故直後の東海村とその周辺では、妊娠していた多くの人が、おなかの子が異常なく生まれてくるかどうか、夜眠れないほど心配されたそうです。また、広島・長崎の原爆で放射線を受けた人の中には、結婚して生まれる子供に遺伝病が現われるかもしれないという不安のため差別されて、一生結婚できなかった人が少なくないそうです。  

 人類が地球上に誕生した600万年も前から、私たちは先祖代々、毎日少しずつ放射線を受けながら暮らしてきました。このことから、私たちは自然放射線にはびくともしない防衛機能を持っているといえるはずです。これから、放射線を余計に受けても、その量が1年間に受ける自然放射線量(1ミリシーベルト:但しラドンを除く)の100倍くらいまでならば、心配は無用という証拠をお話します。

 放射線が安全か危険かは量で決まるのです。JCO事故で2人の方が亡くなりましたが、この人たちは私たちが日常生活で受けている自然放射線量(1ミリシーベルト)の1万倍程も、しかも一瞬に受けたからです。自然放射線量の5千倍以上の量は致死量で、これが2千倍に減ると死亡する危険はありません。JCO事故の後遺症で亡くなった2人のそばで、放射線を受けて助かった方の被ばく量は、この程度であったといわれています。

 では、世界で原子力を利用している国では、わずか年間1ミリシーベルトの被ばくも一般住民には及ぼさないように、放射線管理を厳しくしているのはなぜでしょうか?これは、1958年第1回国連原子放射線科学委員会が、次の声明を出したからです。「核兵器実験などによる世界中の環境放射能の微増ですら、このまま続けば大多数の人の中に障害をもつ人を生みだす可能性がある」。続いて、国際放射線防護委員会は、「放射線のリスクは線量に直線的に比例し、安全な線量域はない」という仮説を放射線防護の基本に据えて、各種の放射線防護に関する勧告をしてきました。各国政府はこの勧告に従って放射線管理の法規制を強化してきました。しかし最近は、この後述べるように、「放射線は少しなら心配無用」という考えの人が増え、この考えを支持する証拠がたくさんでてきています。

(引用資料の原著は近藤宗平:「人は放射線になぜ弱いか」
講談社ブルーバックス(1998)に譲る)


ホームページに関するご意見・ご感想をこちらまでお寄せ下さい。
メールアドレス:rah@iips.co.jp